パイナップルレザー

農業廃棄物を活用して生まれた不織布

ピニャテックスは、パイナップルの廃葉から抽出したセルロース繊維を原料とする天然素材の不織布です。パイナップル産業では、毎年4万トンものパイナップルの葉が廃棄されています。これらを農家から買い取りって有効活用して作られている素材です。

1平方メートルのピニャテックスを作るには、パイナップル16本分にあたる約480枚の葉が必要です。パイナップル農家は、これまで畑に放置するか燃やすしかなかった葉を買い取ってもらうことで、副収入を得ることができます。また、繊維を取り除いた後に残るバイオマスは、肥料として使用されています。

Piñatex®(ピニャテックス)を開発したアナナス・アナム社はロンドンにあります。創業者であるカルメン・ヒホサ博士は、皮革製品の専門家。1990年代にフィリピンの皮革輸出産業のコンサルティングに携わったことで、大量の皮革生産と化学薬品による「なめし」が環境に与える悪影響に衝撃を受けました。

「商業生産が可能で、社会的・経済的にプラスの影響を与え、環境負荷の少ない新しい素材を作ろう」と考えたカルメンは、農業廃棄物であるパイナップルの葉に着目。その豊富な繊維を用いて、環境への影響を最小限に抑えながら、農家に新たな収入源をもたらすサステナブルな素材として、ピニャテックスが開発されたのです。

 

その製造工程は非常に手間ひまを要します。まずは、パイナップルの収穫後に残った葉を集めて束ね、機械を使って長い繊維を抽出します。その繊維を洗って乾燥させ、精製して不純物を取り除くとフワフワのパイナップルリーフファイバーとなります。さらにトウモロコシを原料とするポリ乳酸と混合し、ピニャテックスのベースとなる不織布「ピニャフェルト」が作られます。

ピニャフェルトはスペインまたはイタリアに輸送され、仕上げのための特殊加工を施してピニャテックスとなります。質感の異なるバリエーションが複数あり、GOTS認証の顔料を使って着色し、強度・耐久性・耐水性を高めるために樹脂のトップコーティングを施したもの、箔を熱プレスで貼り付けたものなどがあります。

現在ピニャテックスはHugo Boss、H&M、Hilton Hotel Banksideなど、世界中の1000以上のブランドで使用されています。

アナナス・アナム社の公式サイト(英語)
https://www.ananas-anam.com